数ヶ月前に「家から出ずに自粛するように」とのお達しがあったとき、正直なところ、ホッとしてしまった。
何もせず家に居るだけでいいんだ……! これで堂々とゴロゴロできる! という安堵感さえ覚えた。本音。笑
それまで自覚していなかったけれど、「あれやらなきゃ、これもやらなきゃ」という焦りが、自分の中にあったことに気付いた。
あらゆる予定がなくなり、人とも会えなくなったりして、世界は静かになり、いつの間にかそんな私の焦りは消えていた。
人との接触が断たれたことで、無意識に人と比べてしまって落ち込むようなこともなくなった。
もう焦りとか比較とか手放したつもりだったのに、まだ自分の中にあったんだな〜と、そういうものがなくなって初めて気付いた。
だから不謹慎かもしれないけれど、突然プレゼントされたようなこの時間は、改めて自分を見つめ直すにはちょうど良かった。
でも、何もしなくていいんだと喜んだ割には、これまでやりたいと思いつつできていなかったことを一気にしたくなり、むしろ前よりも活動的になった。笑
家にいながらできることが、予想以上にたくさんあった。
これまで見落としていた、日々の「豊かさ」もしみじみ感じている。
自粛期間中の私の過ごしかたを、イラストで表現してみた。
そんなとき、They Draw & Travelという旅イラストサイトで、Mapping This Momentというコンテストを開催しているのを見つけた。
応募要項は長いので読まなくていいけれど、要は「今、このステイホームをどう過ごしてる?」というテーマを、絵で表現してみてくださいというお題!
とても素敵なコンセプトだなと思ったし、描きたいものが次々に浮かんできた。
面白そうなので、参加してみることに!
この機会に、イラストという形で「いまの瞬間」を記録しておくのは、いいアイディアかもしれないと思った。
何を描こうかと色々考えた末私は、Little Joys in Lifeと題して、ここ数ヶ月で気付かされた「日常の小さな11の幸せ」を、絵に描いてまとめた。
応募が完了し募集期間が終わってから、世界中のアーティストたちの作品を見ることができた。
個性的でバリエーション豊かな作品が並ぶその画面をスクロールしながら眺めていて、なんだか温かい気持ちになった。
皆それぞれの工夫で、家の中でもささやかな楽しみを見つけ、ときに頑張ったりのんびりしたりしながら、ひたむきに暮らしているのが伝わってきた。
世界のあちこちに暮らす人達が、この空白の期間をどうやって過ごしているのかが垣間見えて、励まされたし勇気づけられた感じがした。
地球の裏側に住んでいても、生活ぶりは似たり寄ったりなのも、面白かった!
人の営みって、根本のところでは同じようなものなのだなぁと思う。
それでは私の日常がどのように変わったのか、またそこから気付かされたことを、イラストとともにまとめてみる。
家時間を過ごして感じた、11の幸せ。
①寝坊する
何をもって「寝坊」というのかは人によって違うと思うけれど、私の寝坊の定義は、目覚ましをかけずに好きな(ときには常軌を逸した)時間まで寝ること。笑
案の定私は、自粛生活を始めてまもなくして超夜型に😅
お日様が昇っている間はほぼ寝ていて夜は一晩中起きている、という思いっきり昼夜逆転サイクルになった。
それで感じたのが、太陽のありがたさ。
やっぱり太陽光を浴びないと、無理だ〜! とついに限界がきて、今度は朝型になり、毎日のように日光浴を行なった結果、家族に「焼けすぎ!」と指摘されるほど、真っ黒に焼けてしまった。極端か。w
でも相変わらず、目覚ましをかけず起きたい時間に起きている。やっぱり、自分の体内リズムで自然に目覚めるのが幸せ!
②散歩する
運動不足解消のために、他に選択肢がなく始めた散歩だったけど(笑)、家の周りに広がる景色のあまりの美しさに驚いてしまった。
日本の田園風景が、ただ広がる田んぼが、こんなにも綺麗で絵になるだなんて……。
田んぼの水面に、鏡のように映り込んだ夕焼けや山々。思わず写真を撮る手が止まらなかった。
大げさではなく、目の前には絶景が広がっていた。
本当に美しいものって、すぐそばにあるんだなぁ。
③畑仕事
収穫だけは喜んでするけれど、畑仕事なんてほぼ手伝ったことがない私。
これもやっぱり、運動不足によりナマっていく身体をどうにかせねば、と思って始めた。笑
ところが、この気持ちいいこと!
私は庭や畑に出るときはいつも裸足なのだけれど、アーシング効果なのか、とてもスッキリして元気が湧いてくる。
草や土の柔らかな感触が気持ちよく、小さな虫が脚をよじ登ってきたりして、生態系の豊かさを感じる。
野菜の種をまいたり、苗の支柱を立てたり、草を適度に間引いたり……。やることは無限にあるけれど、おかげで好きだった収穫がより好きになった。
収穫したてのフレッシュな野菜をすぐ料理する、リアルFarm to tableな生活が楽しくてたまらない。
ゴマぐらいの大きさしかなかった種から、可愛い芽が出て、実がなるとか、生命の神秘すぎ……!!
④料理と焼き菓子作り
時間ができたので、作ってみたいと思いながら挑戦したことがなかった料理や、少し凝ったものを作るようになった。
料理ってこんなに楽しかったっけ!? と、なぜか一人暮らし始めたての頃みたいな新鮮な気持ちに……!
時間に追われることがなくなり、好きなだけキッチンに立っていられるから、心に余裕が生まれたのだと思う。
エンタメ性のある料理を時間かけて作ったり、器はどれが合うかなと悩んだり、盛り付けに凝ったり、じっくり写真を撮ったりすることができるようになった。楽しい!
「なんか最近、料理の腕上がってない?」と家族が大喜びし、母に至っては「いやー前から思ってたけど、なんか味付けの詰めが甘いというか、野菜の切り方も大きさバラバラで雑だったよね。やっと美味しくなった!」と言う始末。
でも、文句なしに美味しいと絶賛されて、悪い気はしない❤︎
これまでは生きていくための最低限の料理しかしなかったのに対して、お菓子を焼いたりする余裕もできた。
ただ、連日オーブンがフル稼働するほど作り、全部胃に収めていたら、当たり前だけど太った。食べるのを我慢するのは嫌なので、運動量を増やすしかないなぁと思う。笑
そして信じられないことに、「誰かのために料理を作ってあげたい」という、これまで感じたことのない感情も芽生えてきた。
何となくだけどこの世界にきっと、私の作るごはんを必要としている人がいると思う。
そう思えるようになったのも、やっぱり気持ちに余裕が生まれたからかもしれない。人って変わるんだなぁ。笑
⑤部屋の片付け
自慢ではないが、これまで部屋が散らかったまま生きてきた人生だった。
足の踏み場はほぼないし、それに慣れてしまっていた。
冴えているときなどは、探しものをイメージするとどこにあるかパッと浮かんだりするので、正直そんなに困っていなかった。笑
でも、いま実家暮らしの私は、家族が常に全員家にいることが増えてから、人口密度が高すぎて息苦しさを感じがちになり(これは皆そう感じているようw)、自分の部屋で過ごす時間が長くなった。
そうなって初めて、快適で居心地のいい部屋にしたいなと思った。
古い書類やサイズの合わない服、眺めていて気分の上がらないものなどはすべて処分し、とてもスッキリした。
スッキリしたら、壁に絵を飾りたくなり、世界中あちこちで買ったポストカードや絵などをペタペタ貼ったらとてもいい感じになった!
もう何年も、部屋を片付けなきゃなぁと頭の片隅で思っていたので、この機会にできてよかった。たぶん、このタイミングでやらなかったら、一生あのままだったと思う。笑
想像以上に、部屋が綺麗な方が何十倍も快適でいい気持ちなので、もう散らかすことはないはず……!
⑥絵を描く
もしかしたら一番変わったのが、描く絵の量かもしれない。
これまでは、描きたいものを色々思いつきはするものの、それをすべて絵にするのは時間的に難しくて、それが小さなストレスでもあった。
でも、時間ができたことで、好きなだけ絵を描けているので幸せ!
そして、気付いてしまった。
これまでは時間がないのを言い訳にしていたけれど、本当は違った。
やるべきことがやれていないのに、それらをほったらかして絵を描くことに対し、どこか罪悪感があったのだ。
そしてその罪悪感いらないなぁと思った私は、自由になり、海外のイラストコンテストに応募しまくっている。
この数ヶ月だけで5、6枚は応募したと思う。別に数字は問題じゃないけど、描きたいだけ描いて、軽々と行動に移せるようになったことがとても嬉しいし、気持ちがいい。
どこも応募要項が英語で、自分の作品の説明も英語でしなくてはならないので、英語の夢を見るようになった。笑
本当は英語もちゃんと勉強したいけど、やりたいことが多くて、まだそこまでたどり着けていない。
英語をマスターしたら、次はフランス語をやりたい。いつになるやらって感じだけど、やりたいことがあるのは幸せなことだな、と思う。
そして最近は、描いたイラストをグッズ化して販売する準備もしている。
実は、以前から「あなたの絵のグッズが欲しい」と言われることは度々あって、それはすごく嬉しいのだけれど、なんか色々大変そうで踏み切れなかった。笑
でも、ふとこの絵、エコバッグとかクッションカバーにしたら可愛くはあるまいか!? と思って実際にシミュレーションしてみたら、予想以上に可愛かったのだ。
この絵はノートの表紙にしたいなとか、これはTシャツにぴったりだな! と色々作っていたら、ものすごくテンションが上がって楽しくなってしまった。
もうちょっと細かい調整が必要なのだけれど、自分の元に届いたらきっと感動すると思う。2Dのものが3Dになるってすごい!
⑦旅の思い出を振り返る
旅の思い出を整理したいなと思いつつ、ずっとできていなかった。
昨年は、次から次へと色々な国を旅していたので、振り返る余裕がなかった。
というか、帰国するとまたすぐ中毒みたいに行きたくなるのでw、振り返るよりは次どこ行こう!? ということで頭がいっぱいだった。
海外に行ける状況ではなくなり、たくさん撮った写真も整理していないし、今のうちにスッキリさせておこうと思った。
写真を国ごとにフォルダ分けしたりする作業は、思いの外楽しかった。
旅の思い出が蘇り、やっぱり写真っていいなぁと思ったりもした。そのときのエネルギーが、そのままそこに残っている感じがする。
ブログで書きかけの記事もいくつもあるので、ちょっとずつ公開したい〜。
⑧昼間からお風呂に入る
私はきっと、しずかちゃん並みにお風呂が大好きだと思う。
気付けば一日に、2回でも3回でも入っている。笑
単純に、身体がゆるむので気持ちがいい!
京都で一人暮らしをしていた頃は、銭湯や温泉に行くのが好きで、でも家に帰ってからも必ず入っていた。寝る直前に入浴しないと、なんとなく一日を終われないのだ。
本を読み始めると何時間でも入ってしまうので、最近はお風呂では読まないけれど。
ちょっとした頭痛や肩こりくらいだったら、湯船に浸かれば治ってしまう。気分もサッパリする。
ずっと家にいるからこそ、気軽にできるリフレッシュ法だと思う❤︎
⑨積ん読の本を読む
しばらく自分と向き合うために読書断ちをしていたけれど、久しぶりに本を読んでみたらその喜びが蘇ってきてしまった。
幸い、後で読もうと思って床に積んでおいた本の山があった。
貪るように読んだ。
辻仁成さんと江國香織さんの小説にハマり、お二人の著書だけで数十冊は読んだかもしれない。
好きな作家さんの本ばっかり集中して読みまくるというのは、最高の贅沢だと思う。
物語というのは、読んでいると喜怒哀楽やハラハラドキドキを感じることができるので、なんというか「感情の充実感」のようなものを与えてくれる。
人と会えなくても、本を読むことで、人の人生をありありと疑似体験できる。
映画なども同じかもしれないけど、「家から出られない」という毎日が単調になりがちなシチュエーションではかなり、気晴らしとして役に立ってくれると思う。
食や暮らしのエッセイなども、たくさん読んだ。家での暮らしを楽しむということは、日々をとても豊かにしてくれるなぁと思った。
唯一ちょっと困ったのは、いつも利用している図書館がコロナの影響で閉館していたこと。
私の読書量を支えるには図書館の存在が不可欠だったんだなと、改めて有難みを感じた。
部屋にあった積ん読本をあらかた読んでしまうと、Amazonで読みたい本を注文して読んだ。ヤフオクで、絶版になってしまっている本を落札したりもした。時節柄忙しいだろうにあっという間に届くし、そういうサービスは本当に有難い。
最近になって図書館が再開したので、また喜び勇んで通っている。窓や扉をすべて開け放って換気してくれていて、冷房が苦手な私としてはずっとこのままでいいのに、と思う。省エネだしね。笑
きっとインテリアになって終わりだろうなと思っていた、海外で買った洋書も少しずつ読んでいる!
好きな分野の本を英語で読むと語学学習がはかどるし、脳みその全然違う場所がツンツン刺激されるようで、気持ちがいい。
⑩ゆっくりお茶を飲む
私はアルコールやカフェインが苦手だし、飲むよりも食べることに興味があり、一生飲むのは水だけでいいやと思っていた。笑
それがここ最近になって、熱いお茶を自分で淹れて飲むことに目覚めてしまった。
庭のフレッシュなミントや月桃を、ハーブティーにすると最高に美味しい! ふわっと立ちのぼる、爽やかで芳醇な香り……!
こんな素晴らしい飲み物を、これまでどうして知らなかったのだろうか、とさえ思う。
私はやっぱり水が好きなので、基本的には一日中水ばかり飲んでいるのだけれど、ちょっとひと休みしたいときにお茶を淹れて飲むと、とてもほっこりして落ち着く。
ハーブの魅力に目覚め、25種類のハーブティーが1パックずつ入っている箱を試してみた。
丼で飲みたいくらい気に入ったものもあれば、これはもういいかなと思うものもあり、バラエティに富んでいて面白かった。
ハーブといってもいろいろ種類があるんだなぁ、と感動しきり。
今のところ、オーストラリアで買ったバニラやシトラスがブレンドされたハーブティーが一番美味しくて、なくなってしまうのが寂しい。
20代の頃にはわからなかった、お茶の魅力。ちょっとだけ、大人になったのかもしれない。笑
⑪星を眺める
コロナで人々が活動を自粛したことにより、大気汚染が解消されて、あちこちの空が澄み渡った……! というニュースを何度か目にした。
地球のあちこちが綺麗になったのは、人間がここまで活動を控えたからこそで、一番良かったことだと思う。
ただ私が住んでいるのはド田舎なので、もともと空気が綺麗で、正直変化はわからない。笑
相変わらず、よく晴れた夜には満天の星空が見える。
それでも、夜は外に出て、星を眺める時間が増えた。
これもやっぱり、心にゆとりができたからかなぁと思う。
外に出かけづらい分、ずっと家の中にいると流石に息がつまるので、頻繁に庭に出るようになった。
芝生に寝転がって、星空を見上げるのも気持ちがいい。
すぐそばが田んぼなので、蛙の合唱にも癒される。
夜の静けさに、心がスーッと浄化されていくのを感じる。
この感覚は、都会に住んでいた頃にはなかった。
もし以前のようにアパートやマンションで一人暮らしをしていたら、きっとステイホームには耐えられなかったと思う。
これからの人生でまた色々な場所に住むと思うけれど、やっぱりある程度田舎に住みたいなぁ、と改めて。
緊急事態宣言が解除されて
こんな感じで私は、日々の喜びを一つ一つ味わいながら過ごしていた。
これまで見落としてしまっていたかけがえのないものを、再発見する毎日。
それなのに、いざ緊急事態宣言が解除されると、あろうことかまた得体の知れない「焦り」が出てきてしまった。
え、世界はもう動き出すの!? じゃあ私も動き出さなきゃ! という具合に。
なんか世間のペースに振り回されているな、と思った。あれだけ、マイペースな自分のペースはどこへ行ったんだ。笑
世間がちょっと動くと、途端にこれだ。
でも、世間がどうであろうと、本当は関係ない。
どんなときも、自分のリズムを大切にしたい。
究極、自分さえ見失わなければ、世界がどうなっても大丈夫だと思う。なんでも自分次第だから!
世の中の「当たり前」が崩れたことで、これからの時代、自分の生き方や理想のライフスタイルを、もっと自由に選べるようになるだろう。
いや選ぶというよりも、自らクリエイトしていく、そういう流れになっていく気がしている。
私みたいな変人にとっては生きやすくなりそうで、これからが楽しみ。
そして、こんな状況になっていなかったら、愚かな私はきっと気付かなかったと思うけれど、幸せはすぐ足元にもあった。これまで、地球の裏側にばかり探していたけれど。
ただやっぱり、海外に行けるようになったらまたあちこち旅したいし、いろんな国の市場で食材買って料理したいし、旅をしながら絵を描きたい! という気持ちは変わらない。
一方で、数ヶ月前に書いたやりたいことリストを見てみたら、全然ピンとこなかったりもした。
余計な雑音がなくなったことで、自分の本当の望みが、クリアになった気がする。
でも、一人の時間は十分堪能したので、そろそろ人に会いたい!笑
自分と向き合うことも、会いたい人と会うことも、私の人生には両方大切なことだから。
▼私の作品掲載ページ。リンク先でいいね❤︎していただけたら、嬉しいです!
https://www.theydrawandtravel.com/artists/saori-ohkuni
When quarantine started because of COVID-19, I decided to spend this time doing things I couldn’t do very much until then.
Even in this situation, there are many things I can do in and around the house, and I was able to notice the small happiness in my life.
It was very encouraging to see how people all over the world were spending this time through their unique drawings.
Thank you so much for such a wonderful project!